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越前松島

 様々な方向に発達した柱状節理
 貴船神社の裏手の道を海の方(北)へ進み途中の分岐点で左へ下ると,越前松島のゴツゴツした岩場が見えてきます(写真1)。この岩場をつくっているのは玄武岩質安山岩の溶岩(吉澤,2012)です。この溶岩からは約1300万年前という放射年代が報告されています(東野・清水,1987)。岩場の周辺には遊歩道が設置されているので,近づいて観察することができます。溶岩には柱状節理が発達しており,その伸び方向は様々です(写真2)。溶岩が冷え固まる際,柱状節理は溶岩内部の等温面に対して垂直方向に発達します。溶岩が平らな場所に流れ,上(空気)と下(地面)の二方向から単純に冷やされる場合,溶岩の上面・下面は冷やされるため低温,溶岩内部は高温ということになります。この時,溶岩内部の等温面は溶岩の上面・下面とほぼ平行になると考えられます。この場合は,溶岩の上面・下面から内部へ向かって垂直に柱状節理が形成されます。越前松島の様々な伸び方向の柱状節理は,このような単純なストーリーでは説明できそうにありません。おそらく溶岩内部に複雑な等温面を形成する何らかの要因があったのでしょう。遊歩道の先の岩場に登ってみると,周囲には同様の柱状節理がみられる複数の小島が点在していることがわかります(写真3,4)。これら小島と越前松島の溶岩は,元々はひとつの溶岩でしたが,波によって侵食され,現在のような岩場になったのです。岩場に登ったら,是非足下にも注目しましょう。五角形~六角形の柱状節理の断面が観察できます(写真5)。
 この場所では,越前松島の溶岩基底部も観察することができます。『弁慶の抜け穴』と同様,水によって冷やされ砕けた溶岩の基底部と堆積岩が混在した岩相がみられます(写真6,7)。
  写真1.越前松島の溶岩からなる岩場.

 写真2.様々な方向に発達した柱状節理.  写真3.遊歩道先の岩場を登った地点.足場が悪いので登る際には要注意.
 
  写真4.岩場からみえる小島にも同様の柱状節理がみられる.

  写真5.五角形~六角形の柱状節理断面.
 写真6.溶岩基底部.水冷破砕した溶岩(暗灰色)と堆積岩(淡黄色).   写真7.『聖穴』の階段脇にみられる溶岩基底部. 

引用文献
東野外志男・清水智(1987)福井県三国海岸に産出する火山岩類のK-Ar年代.石川県白山自然保護センター研報,14,25-30. LINK
吉澤康暢(2012)越前松島玄武岩質安山岩の産状.福井市自然史博物館研究報告,59,7-16. LINK