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東尋坊貫入岩体の南端

 マグマの貫入
 藻取浜製塩遺跡前の階段を下りた地点から少し北側へ移動した場所では,堆積岩(宿凝灰岩部層)と火山岩を観察することができます(写真1,ハンマーの辺りが境界)。地層ができたストーリーを考えるために,両者の上下関係を見てみましょう。下位が火山岩,上位が堆積岩となっています。地層累重の法則に従って単純に考えれば,火山岩の定置後に砂・泥が堆積,というストーリーが考えられるかもしれません。でも,もっとじっくり観察してみましょう。火山岩には境界部からほぼ垂直に柱状節理が発達しており,その節理の幅は境界部で最も狭くなっています(写真2)。また,火山岩は全体的に灰色っぽい色をしていますが,境界付近の火山岩は特に黒っぽい色をしています。これは,境界付近の火山岩の石基がガラス質であることを示しています。これらの特徴は,火山岩が堆積岩との境界面で急冷したということを示しています。次に,堆積岩を見てみましょう。ハンマーでたたいてみると,火山岩との境界部付近では固く,そこから上方へ向かって軟らかくなっています。火山岩との境界付近の堆積岩が焼かれて固くなったことを示しています。以上の観察事実を統合すると,堆積岩があった場所にマグマが貫入してきた(堆積岩をマグマが貫いた),というストーリーが考えられます。この火山岩は,東尋坊貫入岩体(吉澤,2005)の南端部に相当します。
  写真1.宿凝灰岩部層(上位)と東尋坊貫入岩体(下位).ハンマーの位置が上下の境界. 

 写真2.宿凝灰岩部層(上位)と東尋坊貫入岩体(下位)の接触境界部. 

引用文献
吉澤康暢(2005)東尋坊安山岩質貫入岩体の産状と構造.福井市自然史博物館研究報告,52,13-27. LINK